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 2012/12/05



祝いかまぼこ

かまぼこの美味しさ(第4回目)

 
 蒲鉾の特性から、その見た目の姿の美しさ、色、艶、弾力である足、そして香り、味が決め手となる蒲鉾をいいかまぼこ≠ニ言われています。いいかまぼこ≠ナあれば、よい魚を使用していることになります。私はこれらに加えて、噛んだときの歯切れの微妙な音も大切だと思います。ですから、かまぼこ屋の評価は端的に言えば、その店の最上位の板付蒲鉾に集約し表現されているといえましょう。

 私は板付蒲鉾をワサビしょうゆにちょっと付けて日本酒とともに食するときは、その蒲鉾を厚めに切って付けて食べます。これは何も蒲鉾特有の食べ方ではなく、素材の良いもの、美味しいものを食べるとき、大きく切り分けたり、またはすくって食べたり、飲んだほうが、その素材の味がとても良く判ります。霜降り和牛を細かく食べるより、ナイフで大きくカットしてほおばったほうが美味しいですよね。

 付言として揚げたて、焼きたてが美味しい、と思うのは高熱によって舌の感覚や喉の感覚が麻痺している状態ですから食品本来の味わいを充分に捉えることができずに、調味料を使う食品であればその味が先行して美味しい、というある種の錯覚を覚えてしまいがちですから、もうお判りの通り逆に冷めても美味しい♀蘭gを作れるかまぼこ屋は技量のあるお店といえます。たとえば京料理やおせちは一般に冷めた状態で提供されますが、やはり美味しいと感じるお店は名店である場合がほとんどです。

 話は逸れましたが、蒲鉾の弾力である「足」こそが蒲鉾の命といわれています。次に風味でしょう。風味はもちろん調味料よりも主体は原料魚肉のエキス成分ですから、足が強く出るよい魚が選ばれます。しかし、せっかくよい魚を仕入れても鮮度が落ちてしまえば元も子もありません。つまり鮮度が悪いと弾力が落ち、風味も悪くなるからです。

 当社の蒲鉾の弾力「足」は日本の蒲鉾の中ではかため≠フグループに入ると思います。特に九州産の新鮮な生の白グチを使用した『初日の出』や、東宮御所献上の『銀峰』や『味醂焼き』がそれです。最近はやわらかい食品、ソフトな食感の傾向がありまして、当社でもお子様やご高齢者のためにそのような蒲鉾も製造しています。しかし、魚肉に添加物や水を加えることによって蒲鉾をやわらかくする(足を落とす)のですから、当然原価は下がります。もちろんソフトな蒲鉾、やわらかい食感をターゲットにした蒲鉾もありますから、マイナスのイメージばかりではありません。当社にはそういう洋風でソフトな感覚の蒲鉾、フィッシュケーキ≠イメージさせた商品が昭和50年代からありまして、以前大阪のある食品展覧会に『シーアーチンランド』を出品したところ、水産庁長官賞をいただきました。そのとき同業者さんから「最近は消費者傾向でこういうソフトな蒲鉾も作っているんですね」と言われ、私は「いえいえ、祖父の代からこういうフィッシュケーキをイメージした食べやすいテリーヌ風のやわらかな蒲鉾も当社では三十年以上前から作っているのですよ」といいました。これらは当社では『シーフーズランド』といいまして、その他にも日本でも珍しい蒲鉾をラインナップ(総称して『シーフーズシリーズ』と名付けています)していますが、当社は大きなコマーシャルや広告を行っておりませんので、このような特殊な蒲鉾は、魚肉ねり製品を愛する全国のグルメな嗜好家の方々には評判がよろしいようですね。

(株式会社 か ね 彦 代表取締役 中島 代博 2012.12.05)

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