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 2012/11/05



前浜の魚(第3回目)

 今や蒲鉾の原料魚において、「前浜の魚」という言葉はほとんど聴かれなくなりました。冷凍原料すり身という原料形態が出現しそれらが大量に生産され、さらには蒲鉾製品が廉売化して価格競争が激化する以前は、原料魚はメーカーが調達に便利な近郊の漁港(前浜)からの入荷がきわめて多く、ゆえにその地方の名産蒲鉾≠ノ一種独特の特色があったわけですが、現在は水産庁などの統計に見られるように、主に北米やロシア、中国、インド、タイランドなどからの輸入冷凍原料すり身に大きく依存しているため、「前浜の魚」ということで言いますと、商品の外見は同じでも、地方色といった味の競演が見られないため、面白みがあるとは言えません。しかし、今でもこの「前浜の魚」を蒲鉾の原料として三枚おろし、採肉、水晒し、脱水、擂潰…といった伝統的な自社一貫の製法にこだわられているメーカーは全国にあります。また「前浜の魚」を使っていなくても、冷凍原料すりみにもスケトウダラやイトヨリに見られるように、いくつかのランクがあり、ここにこれらを使用するメーカーとしてのこだわりを持って生産されている、といったことが現代の蒲鉾メーカーの原料魚における特色として言えるのではないでしょうか。つまり、一概にスケトウダラ使用といっても品質の高低は食べてみないと判らないわけです。

 当社が使用する冷凍原料すり身は従前使用の同一製品であっても特にユーザーの指定が無い限り、たとえ上級品であっても自社の品質基準(白度・弾力・食感を主とする)に合わないものの買い付けは行いません。また一部の製品については生魚の原料を指定の魚場から継続的に買い付け自社一貫生産の製法を守っている製品もあります。本日も九州から買い付けた生の白グチが入荷し、早速午前中から原料となるグチのすりみを製造しています。これが当社お正月限定販売の『縁起蒲鉾初日の出』や『味醂焼き蒲鉾』、さらには東宮御所献上の『銀峰』となるわけですが、こういうあまり量産、廉売の今の時代にそぐわない昔ながらの蒲鉾製造法にこだわっているところが当社の素朴なところだと考えています。

(株式会社 か ね 彦 代表取締役 中島 代博 2012.11.05)

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