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 2013/07/22



板かま手付け

「カマボコ」という食べ物(第5回目)

 そもそも「カマボコ」という食べ物は一般的にどのようにイメージされてきたのでしょうか。カマボコ料理は平安貴族の献立料理として文献に登場した永久3年、すなわち1115年をもって「かまぼこの日」(11月15日)と私の会社も所属している全国蒲鉾水産加工業協同組合(ゼンカマ)では決めました。
 おそらく、この献立料理よりもずっと前だと思いますが、カマボコの語源ともなり、さらにカマボコの原始形というものがありまして、植物の「蒲の穂」(ガマノホ)の姿に似ている、今の竹輪の形をしていて、竹などの棒の先にお魚のすりみを付けて短剣焼きのようにして食べていたようです。
 また、もちろんタンパク栄養価の高い保存食としても、ほかに保存食の少なかった当時は珍重されたことも想像に難くないでしょう。
 このように日本人の美意識から高度に洗練された日本料理のひとつであり、海外の魚肉ねり製品(カマボコ)よりもバリエーションが豊富で、食感、味わいもすばらしい魚肉ねり製品(カマボコ)は、私としては日本の「蒲鉾」が一番すばらしいと思っています。

 さて、現在、カマボコのイメージはどうでしょうか。
 街に出て見ましょう。そうすると私たちが一般にカマボコを購入できる場所はコンビニ、スーパーやデパート、さらにはお土産珍味店、場合によってはお魚屋さんにおいてでしょう。重さや一見して同じ外観に見える揚げ蒲鉾、焼き竹輪、なると、さらには板付きの蒲鉾なのに、比較すると随分価格差といいますか、同じ名称にもかかわらず品物によっては個性が見られます。
 必ずしも比較はできませんが、好例としてお子様の大好きなハンバーグと比較してみるとよいでしょう。ハンバーグに使われるお肉は牛肉が一般的でしょうけども、原料肉は輸入牛、国産牛、和牛とさまざまで、和牛でも白老牛、神戸牛、松坂牛、近江牛などなど100g当たりの価格も様々で、その原料となる牛肉によってハンバーグの値段も違います。
 カマボコもそれぞれのかまぼこ屋さんで、お魚原料の配合割合やお魚の種類、さらに同一魚種でもグレードの違いがありますので一見外観は同じでも食べてみないと判りません。これはハンバーグにおいても同じことが言えると思います。
 たしかに、そういった国産、外国産といった区別や国内でも産地別によるネームバリューなどで一見おなじ外観で重さも同じ、それなのに金額が違う、というさまざまな食品群があり、そういう個性的な食品が圧倒的に多いのですが、どうもカマボコは何が混ざっているかわからない、どんな原料魚を使っているのか、本当に魚なのか、といった基本的なご質問を耳にする機会が多い食品の一つだと思います。これはハンバーグと違い、カマボコは食品としての認知度が低い、つまりはかまぼこ屋としてお客さんに品物について本質的にきちんと説明していないでずっと商売をしてきたのではないだろうか、と私は反省しています。「よいものは黙っていても売れる」→「よいものは宣伝をしなければ売れない」という現代の情報化社会に呑み込まれる一面も伝統産業にはあるのだろうと思いますが、私どものかね彦のカマボコは地道に品物本位の「かまぼこ道」を歩んでいこうと考えています。

 本日の題目から逸れてきましたので、ここで「カマボコ」という食べ物≠ニは何か、カマボコの便利なところ、他の食品とは異なる機能的な特性と申しましょうか、私は次の2つを同時に内包していることだと思います。
@ お魚のすりみそのもの自体を加熱(カマボコ)しても一つの料理として成立している。
A お魚のすりみは加熱(カマボコ)をすると、練り合わせた様々な具材(たねもの)どうしと緊密な「つなぎ」の役目を果たしている。
 上記@の代表的なカマボコは、紅白の板蒲鉾、焼き竹輪、白丸天、つと巻などであり、Aの代表的なカマボコは、ちぎり揚げ蒲鉾、包み揚げ蒲鉾、けんちん焼のし、当社の『シーフーズシリーズ』などです。
 このように考えるとお肉の挽肉などと違い、一般にヘルシーでEPAやDHAも豊富といわれるお魚、そのお魚から採肉処理をして調味して作った「すりみ」や、さらに加熱処理した「カマボコ」は一考しますと、ちょっと料理のバリエーションを広げさせ、世界の加工食品としても日本の伝統食品としても深いものを感じませんか。

(株式会社 か ね 彦 代表取締役 中島 代博 2013.07.22)

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