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 2012/09/05



たかが「かまぼこ」、されど「蒲鉾」(第1回目)

 「かまぼこ」は学問的に言いますと「魚肉を水晒しによって水溶性の筋形質タンパク質を減少除去させ脱水し、食塩によって擂潰(ライカイ)することにより筋原繊維タンパク質をアクトミオシンに変性させ肉糊ができる。これを加熱によってゲル化させた水産加工品」ということになりますが、その加熱処理によって「蒸しもの」(板蒲鉾、つと、なると等)、「揚げもの」(丸天、ちぎり揚げ、長崎ハトシ等)、「焼きもの」(笹焼、角焼、伊達巻等)、「茹でもの」(はんぺん、つみれ等)があります。
 これらを総称して「かまぼこ(類)」、「練り物」、「水産ねり製品」、「魚肉ねり製品」と呼び、外国ではFish cake=AFish paste≠ワたは和製英語としてKamaboko≠ニ呼ばれています。
 余談ですが、私が直接、中国系シンガポーリアンに伺ったところ、ボール形状の練り物は湯スープに入れて食す、というのが一般的で特にFish ball≠ニ呼んでいました。また私の知るところでは北欧ではそれを牛乳に入れて煮込むそうです。

 ところで、かね彦ではFish cake≠ニいう、「ケーキのような洋風テイストでソフトな食感にしたかまぼこ作り」をコンセプトに、日本の伝統水産加工食品である「蒲鉾」を現代風にアレンジした商品もあります。それが当社の『シーフーズシリーズ』で、昭和50年代から、社長や職人が経験とアイデアを出し合い、『シーフーズランド』(第52回『全国蒲鉾組合品評会』水産庁長官賞受賞、また単品として『シーアーチンランド』は第59回『全国水産加工たべもの展』水産庁長官賞受賞)から『鮭丸くん』(第51回『全国蒲鉾組合品評会』水産庁長官賞受賞)まで、現在、全13種類のラインナップがまさにそれです。

 しかしながら、いくら昔よりも食感がソフト化を求められる時代に移行しつつあるとは言え、かまぼこ屋はかまぼこの弾力である、「足」にもっと心血を注ぐべきだと思います。様々な原料魚の「足」を補強しようと、添加物、特に澱粉に頼りすぎる弾力はもはやかまぼこが水産加工品ではなく、農産加工品ではないか、と危惧されている面もあるほどです。
 この「足」が、十人十色のかまぼこ屋の持ち味であり、経験と技術であります。つまり、原料魚の選別である「仕込み」、先程の塩の添加加減とその擂潰温度と時間、そして加熱温度と時間。これら三つの工程がかまぼこの良し悪しを決定するといっても過言ではないでしょう。このことが昔から「一に買出し、二に臼、三に釜」といわれるゆえんです。成型美はプラスアルファ、といえるかもしれません。

 当社の場合、一部、木箱に入ったお頭付きの鮮魚をそのまま入荷させ、作業しなければいけない商品もありますので、自前で魚体を三枚おろしにしてミンチにした魚肉を洗浄する「水晒(さら)し」という大切な作業があります。ただし、魚の「足」をできるだけ損なわさせず、旨味を逃がさないように配慮しながら、「魚によって何回水晒しを行うか」を決めなければいけません。
 現在多くのかまぼこ屋は、一連の「水晒(さら)し」工程を事前に行った冷凍すりみを原料としていますが、かまぼこ屋として自社一貫生産の体制を残しているのも当社自慢の一つです。

 先程「魚によって」と言いましたが、原料とする魚種によって加熱時間や温度が違ってきます。もちろん色々な魚をブレンドした場合はさらにそれらの工夫が必要です。こういったことも水産系の大学機関では学問的に研究しており、有名なところでは北海道大学や東京海洋大学などでしょう。私も蒲鉾製造業に入り込む前は、蒲鉾の製造すべてが昔ながらの職人の勘と経験で、そういう研究が学問的に大学でまじめになされているとは知りえませんでしたが、今ではかまぼこに関する専門書が多くあり、様々な論文で技術をチェックできますので大変助かる面もあります。

たかが「かまぼこ」、されど「蒲鉾」=B

「かまぼこ」はテクノロジーに裏づけされた日本の代表的な伝統食品だと言えると思います。

(株式会社 か ね 彦 代表取締役 中島 代博 2012.09.05)